10個のチャートで「多数決」していた私が、まったく勝てなかった理由
若い頃の話をします。
20代で投資を始めたばかりの頃、私はチャートが大好物でした。
データをこちょこちょ調べるのが好きだったんですね。いろんなチャートを勉強しては、これで正解を導き出せないかとずっと考えていました。
当時はまだパソコン通信の時代です。
ニフティサーブからデータを取ってきて、半分はパソコン、半分は手書きのノートに書き写す。そんなことをやっていました。
ものすごく時間はかかりました。おかげで「やっている感」だけは相当なものでした。
結果は1ミリも勝てませんでした。
📉 私がやっていたのは、要するに多数決でした
やっていたことを正直に書きます。
移動平均。MACD。ボリンジャーバンド。RSI。パラボリック。ストキャスティクス。RCI。スーパートレンド。パラメータ違いも含めれば10個以上を並べていました。
そのうえで各チャートに重みをつけてスコアを出していたんです。
重みのあるチャートが上昇なら上昇の点数が上がる。上昇のスコアと下落のスコアを比べて一定水準で勝った方にトレンドが出ると判断する。
ポイント制なんて呼んでいましたが、やっていることは多数決そのものでした。
迷えばファンダメンタルズや需給も足しました。多角的に分析している気持ちにはなれるんですよね。
なぜ上手くいかなかったのか。今なら理由がはっきり分かります。
並べたチャートは全部が同じ株価データから計算されているんです。
1日の値動きは始値・終値・高値・安値に集約されます。チャートはそれを時間軸と計算方法で分解した、別の絵にすぎません。
だから7対3に見えても、独立した7票ではないんですよ。同じ人に7回意見を聞いて「7票入った」と言っているのと同じです。
そこに確認バイアスが乗ります。人は自分の願望の方向に、無意識で重みをつけて数えてしまう。
チャートを増やしても情報は増えません。増えたのは確信だけでした。
🐎 競馬実験の話を、当時の私は読んでいたはず
もうひとつ、自分でも苦笑いしてしまう話があります。
私は大学生の頃、競馬にかなり本気で取り組んでいました。その過程で出くわしたのが、心理学者スロビックの競馬実験です。
プロの予想士に馬の情報を渡して予想してもらう。ただし情報の数を5個から10個・20個・40個へと増やしていく。本人が重要だと思う順番に渡すので、後から足される情報ほど優先度は低いわけです。
情報量は最終的に8倍になりました。それでも的中率はほぼ横ばいだったそうです。
代わりに増えたものがあります。「自分はどれくらい当てられているか」という自信で、こちらは約2倍になりました。
情報を足して増えるのは当てる力ではなく、当たっている気のほうだった。
当時の私はこの実験を読んで「へえ」と思っていたはずなんです。それでも自分のチャート多数決とは結びつきませんでした。
タレブの「ノイズ・ボトルネック」も同じ構造の話です。細かく大量に見るほど増えるのは、シグナルではなくノイズのほうだという指摘ですね。
年に1回のシグナルなら半分は意味がある。それが毎日になると95%はノイズ。1時間おきまで細かくすると、ほぼ全部がノイズになってしまう。
デイトレやスキャルピングが難しいのはここです。
もちろん億単位で勝っている方はいます。ただ、それは大谷翔平を見て「すごいな」と言っているのと同じレベルの話で、私たちが大谷さんになれるわけではありません。
💡 「お前も毎日20枚見とるやんけ」への答え
ここで自分にツッコミを入れておきます。
私は今、メンバーの方に毎日20枚近いチャートをPDFで配布しています。NT倍率の2枚を別口とすれば18枚。
「お前も多数決やっとるやんけ」と言われそうですよね。
ただ、私が出した答えは「枚数を減らす」ではありませんでした。使い方を変えるほうです。
18枚はほとんど被らないように厳選しています。時間軸も、ワークするフェーズも違う。あるチャートが効く局面では別のチャートが効かない、という組み合わせです。
そのうえで全部に順位をつけました。一律で公平な多数決には絶対に落とし込みません。
たとえばボリンジャーバンドは「最強の裏ボス」だと私は考えています。サインが出ていない通常時は雑魚中の雑魚で、ほとんど見ません。それでも毎日チェックだけはしておく。
バンドウォークが始まった瞬間に、扱いが変わるからです。
上昇のバンドウォーク中は他のチャートを一切見ません。方向はもう決まっていて、問題はバンドウォークがいつ終わるのかだけ。同時に「上がりすぎだ」という天井サインが出ていても、全部無視します。
ここで「そろそろ天井だろう」と売ってしまうのがいちばんまずいわけですね。
複数のチャートを見ている本当の目的は、余計なポジションを持たないことでした。当てるためではないんです。
☕ おわりに
何を重視するかは、その時々の地合いによって変わります。
真夏に冬のダウンジャケットは着ません。寒くなればカーディガンやジャケットを羽織る。ただ季節の変わり目は服装を間違えますよね。相場もまったく同じです。
2023年にバフェットさんが来日してから2026年6月まで、日本株はおよそ4年の超絶上昇相場でした。そういう局面で効くチャートは優先順位が上がります。去年あたりからはボラティリティが異常に高いので、また別のチャートの点数が上がってきます。
地合いの変わり目を明確に察知するのは不可能です。それでも慣れてくると、切り替えのタイミングを少しずつ早められるようになります。
テクニカルで勝てている人は、まさにこの衣替えのタイミングが上手い人です。
若い頃の私は、その順位付けをせずに全部を平らに並べていました。だから勝てなかったんだと思っています。
みなさんは複数の指標を見たあと、最後の判断をどうやって決めていますか。
「昔まったく同じことをやっていた」という方がいれば、あるいは今も点数付けで迷っている方がいれば、コメントで教えてもらえると嬉しいです。



18枚のチャートをすべて見て多数決していました.一つのチャートでサインが出たら,勝てる可能性が高いと自分が思えば乗る,だめならあきらめる.こんな感じでいかがでしょうか.投資初心者です.日々コツコツ勉強させていただいています.これからもよろしくお願いします.
とっても読み応えのある、良い文章でした。結局分からないながらも、少し分かったような気がして、そのあとまた分からなくなる、この繰り返しのような気もします。
そしてここにきて、まさにまた潮目が変ったような気がしてます。さてどうなりますでしょうか。