なぜ下手な投資家ほど「売り」で大損するのか?
オプショントレーダーの熊谷です。
先週末、キオクシアの決算を受けて、信用売りで持ち越した人が月曜にストップ高を食らう ⚠️ という書き込みがXで複数出てました。フジクラもそうですが、半導体・電線・メモリーといった急騰セクターで「もう天井だろう」と売りを仕掛ける人、Xで本当によく見ます。
ところがこれ、過去の投資の名著や行動経済学の研究では「最も下手な個人投資家の典型行動」と言われているんですね。私が言っているのではなく、データが言っているわけです。
今日は、なぜ売りで往復ビンタを食らう人が後を絶たないのか。「6つの罠」と、その背景にある心理を整理してみますね。
⚡ 罠①「下落は早い」は事実だが、取れない
「上昇100日、下げ3日」と言われる通り、下落のスピードは確かに速い。これは事実です。
でもチャートを後から見て「ここで売っておけば20%取れた」と言えるのと、リアルタイムで売れるのとは、まったく別の話なんですよね。取れたら大きい という事実だけが残って、「だから売りで狙いたい」という気持ちにすり替わるのが、最初の入口の罠です。
🪞 罠② Xで「同じ目線」を見つけて確信に変わる
株価が上がると「さすがに高すぎるんじゃないか」という違和感が出てくるのは、自然な感覚です。
問題は、ここでSNSを開いてしまったとき。「自分も高すぎだと思う」「もう天井」というポストを見ると、「みんなも言ってる、自分の分析は正しい」 という確信にすり替わってしまう。
これが 確証バイアス ですね。客観的な事実だったはずの「高値」が、いつの間にか 自分の予言 として扱われ始める。そこで売りポジションを取ってしまうと、損切りが「予言の否定」になって、機械的に切れなくなります。
👑 罠③ 「自分だけが本質を見ている」という知的優越感
ここがいちばん危険な罠です。
熱狂して買っている人 = 愚かな大衆。それを冷静に見ている私 = 違いがわかる側。こういう アイデンティティの構図 が、無意識に形成されていく。
心理学では「内部リアリズム(素朴な現実主義)」と呼ばれる現象だそうです。「自分は世界をありのままに客観的に見ていて、バイアスから自由だ」という思い込み。
「自分は冷静に見えている」という感覚そのものが、実はいちばん強力なバイアスなんですね。
「ずっとAIはバブルだ」と4〜5年言い続けて、その間に株価が20倍になっている解説者を思い浮かべると、わかりやすいと思います。アイデンティティになってしまうと、損が膨らんでも「大衆がまだ間違っているだけ」と解釈してしまうので、撤退できないんです。
⚖️ 罠④⑤⑥ 売りは、構造的にそもそも不利
ここはまとめて。買いと売りは「逆向きに同じ」ではありません。
買い方と売り方の構造を並べると、こんな具合になります。
最大損失: 買いは元本まで、売りは理論上無限大
最大利益: 買いは理論上無限大、売りは株価ゼロまで
時間: 買いには味方、売りには敵(株は長期では上がっていくため)
コスト: 買いは配当が入る、売りは逆日歩と金利を払い続ける
踏み上げ: 上昇局面でショートカバーが連鎖して上にオーバーシュート
いわゆる「買いは家まで、売りは命まで」という投資格言のアレです。
おまけに「半額になれば50%取れる」という算数の罠もある。1,000円が500円になれば50%の利益、これは正しい。でも先に1,500円・2,000円になる可能性は計算に入っていない。儲かる方ばかり計算してしまうのが人の性なんですよね。
つまり、売りから入る癖がある人は、常に構造的に厳しい戦い をしている。立ち回りで圧倒的に勝てる人でなければ、長期で見て負けるのが当たり前なんです。
📊 データも示す厳しい事実 — バーバー&オディーン(2001)
感覚論ではなく、実証研究もあります。
行動経済学者のバーバー&オディーンが2001年に発表した、約3万5千口座 の個人投資家データの分析。
過信した投資家ほど売買頻度が高く、長期リターンは低い
積極的に売買する男性投資家は、市場平均を年率2〜3%下回り続けた
そしてその多くが「売り」でやられている
「自分は賢い」という感覚と、実際のパフォーマンスは むしろ逆相関 していたんですね。ドキッとする話です。
🎯 そもそも「株は長期で上がるもの」が大前提
株式投資は、国家と企業の長期的な成長にベットする ゲームです。10年20年に1度は30〜50%の急落サイクルがやって来ますが、それでも全体としては上がっていく。
「株は下がるもの」と思って参加するなら、そもそもこの市場に来る理由がない、ということになります。
下がったところを買うのと、上がったところを売るのは、見た目こそ対称ですが、リスク・リターンも、時間との関係も、コストも、まったく違うゲーム です。「リターンが大きいから売りで取りに行きたい」と思っているうちに、リスクのほうで一発退場、というのが典型パターンなんですね。
😌 おわりに — 「下手」を潰せば、少なくとも下手ではなくなる
正直、「どうやったら勝てますか?」の答えは、運やセンス、経験、資金力で人それぞれです。誰かの真似をしても勝てるとは限らない。
でも、「どうやったら負けるか」は、過去のデータと心理学が明確に教えてくれます。先人の失敗を知って、同じことをやらなければいい、それだけ。
急騰セクターの上昇局面で信用売りを仕掛けない
「自分だけが冷静」という感覚を疑う
売りに入る前に、損益構造の非対称性を一度紙に書き出してみる
下手なトレードを一個ずつ潰していけば、少なくとも 下手ではないトレーダー にはなれます。上手いトレーダーになるのは、そこから先の話ですね。
今日はちょっと刺激的なタイトルでお話しました。
次回もまた、ポッドキャストでお会いしましょう。



熊谷さん、みなさん、こんにちは! ななぞーです、これにコメントするとどうなるかの確認です(笑)
Substack、すごいですね!
僕はこれを音声再生して聞きましたょ。(どのようにして作成したんだろう?)
内容は、ほとんど僕の思いと同じです、個別株やETFを信用売するのは愚策ですよね、僕は今後下げると予想しているのでETFの日経ベア2倍を買い持ちしていて、オプションではミニプットを少々買い持ちしているんだ。今みたいな高ボラ時にコール売りをしていると何かのきっかけでガンマスクイーズが起こり、大きな損失になることがあるよね。
これらの事を意識してオプションの売りでもショーツストラングル(その2)を建てています。権利行使価格は9000円も離して、デルタニュートラルにするため原資産も数枚売って建てました(コール側のデルタに合わせるとニアプットになるため)ヘッジも0.15で今のところ順調です。
これからもよろしくお願いします。