日経VIが39.79で「暴落の前兆」? その読み方、たぶん間違ってます
どうも、オプショントレーダーの熊谷です。
5月1日(金)の引け、日経VIがなんと39.79まで跳ね上がりました。前日比プラス11.21、約40%の急騰です。
X(旧Twitter)では「ゴールデンウィーク中に暴落が来るぞ!」みたいな投稿があふれていて、ラジオ日経のアナウンサーや解説者まで似たようなトーンで話していたりします。
⚠️ でも、これ、結論から言うとほぼ全部間違いなんですよね。今日はその理由を、できるだけかみ砕いてお話ししてみます。
そもそも日経VIって何?
日経VIは「日経ボラティリティインデックス」の略です。要するに、いま日経平均がどれくらい荒れているかを示す数字。
ボラティリティは「変動幅」のこと。株価が1日で1500円上げ下げするような、ジェットコースター相場のときに「ボラが高い」と言ったりしますね。
リーマンショックのときで50ちょっと、コロナショックでも50前半。2024年の上田ショック(日銀ショック)の終値ベースで70いくら、これが史上最高値です。
そう考えると、40近い数字って「なんちゃらショック」級なんですよ。だから「ヤバい!」と騒ぐ気持ちもわからなくはないんです。
でも、終値の39.79は「計算のあや」です
ここからが本題です。
日経VIには、終値で語ってはいけない、というかなり重要なクセがあります。
理由はシンプルで、日経VIの計算ロジックがクロージングセッションと相性が悪いから。引け間際の15時35分くらいまでの値が、その日の「実態に近い日経VI」だと思っておかないと、毎回ミスリードに引っかかります。
💡 実際、5月1日のザラ場の動きを見ると、日経VIは28〜29くらいで推移していました。前日の32からむしろ下がっていたんですよね。それが引け間際にバーンと39まで跳ね上がって、終値として記録された。
ザラ場では28、終値だけ39.79。実際のボラティリティは一切上がっていません。
ほら、後場は28を切るくらいで推移して、15:40で急激に跳ねていますよね。
これ、毎日のように起きている現象です。31で動いていたのに28で終わって、翌日また31から始まる、みたいなことが普通にある。終値だけが異常なんです。
なんで終値だけ跳ねるのか
日経VIの計算には、いくつかの仕組みが絡んでいます。ややこしいんですが、大事なところだけ。
ひとつ目。日経VIは直近30日間を使って計算されます。だから5月1日の時点だと、5月限はもう1週間しか残っていない(SQが5月8日)。30日に足りない約20日分は、6月限で埋めるんですね。
つまり、5月1日のVIに対する5月限の影響度は実は4分の1未満。残り4分の3は6月限なんです。
ふたつ目。クロージングセッションのときに、約定がないところは「中値(売り値と買い値の中間)」で計算に組み込まれることがあります。
連休前って、売り手のディーラーは「何か起きたら困るな」と思って、約定はしていなくても売り値をちょっと上げるんですよ。50円のプットを55円、60円に。買い手側のマーケットメーカーも、それに合わせて少し引き上げる。
そうすると、約定していないのに、IV(インプライドボラティリティ)が全体的にスコーンと跳ね上がるんですね。これが5月限でも6月限でも同時に起きる。
約定はしていないのに、計算には乗ってしまう。これがクロージングのロジックの落とし穴です。
プットが大量に買われたわけじゃない
「いや、でも実際にプットが買われて防御されてるんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。
でも、オープンインタレスト(建玉)を見ると、連休前としてはほんの少し増えている程度で、特別な動きじゃないんです。むしろ落ち着いてる。
Priseというアプリで5月限・6月限・7月限のプットIVをグラフ化してみても、5月1日のザラ場では全部下がっていました。「機関投資家が暴落を察知して大量にプットを買った」というような形跡は、データを見る限り見当たりません。
※赤が第2限月なので6月限ですが、右端が5月1日。前日の4月30日よりも下がってますよね。PUTのIVなんか全然上がってないしむしろ下げ基調です。
■終値で語ると恥をかく時代になってきた
オプションが盛んなアメリカだと、VIX(米国版)でこういう現象を真に受けて騒ぐ投資家ってあまりいないんですよね。日本はまだ、オプションのリテラシーがそこまで広がっていない。
🌱 だからこそ、ちょっと知識をつけるだけで一歩リードできる時代でもあります。
ありがたいのは、いまはAIに聞けばすぐわかること。日経VIの計算方法もクロージングセッションのルールも、JPXに開示されています。スクショをChatGPTに投げて「これってどう読めばいい?」と聞くだけで、たぶん同じような答えが返ってきます。
NotebookLMに正確な情報源だけを入れて、ハルシネーションを避けながら使うのもおすすめです。
おわりに
投資の世界では、こういう「人から聞きかじった話」「終値だけ見た解釈」「アノマリーの受け売り」が日常茶飯事です。
明日株が上がるか下がるかなんて、結局のところ誰にもわかりません。ただ、しっかり基礎を押さえて、データを正しく読めるようになっておくと、ノイズに振り回されにくくなる。これは確実です。
上がるか下がるかを当てるゲームじゃなくて、上がったあと下がったあとにちゃんとついていける準備をしておく。投資の王道って、結局そこに戻ってくるのかなと思います。
ゴールデンウィーク、安心して過ごしてくださいね。





